◇目次◇
1.耐水圧とは...
2.透湿性とは...
3.撥水と防水の違い
1.耐水圧とは…
生地外側からの水の侵入を防ぎ、
どのくらいの水圧に耐えられるかを
数値化したものを言います。
耐水圧の高い生地を使用しているテントや
ツェルトでは、 雨天時のテント泊でも
しっかりと室内への浸水を防ぎます。
透湿性能と同様に耐水圧にも性能を
表す数値があります。
例えば「1,000mm」という数値。
生地に1cm四方の筒を置き、水を注ぎます。
生地裏側に水が染み出てくるまでに注がれた水量
「1,000mm」が耐水圧という数値になります。
1平方センチの筒に「1,000mm=1m」の高さまで
耐えられたということです。
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一般的な日用品で比較すると「傘」です。
傘の素材にもよりますが、「250mm~500mm程度」
の耐水圧です。
となると「1,000mm」も耐水圧があれば十分では?
いえ、そうでもありませんよ(; ・`д・´)
あくまでも1cm四方の筒に水を注ぎ、
どの高さまで耐えられたかという数値です。
人の体重で圧力がかかることを忘れてはいけません。
座った際にかかる圧力は、平均的な大人で
「約1,500mm~2,000mm」です。
濡れた場所に「1,000mm」の耐水圧の生地を
敷いて座ると染み込んできてしまいますね(;・∀・)
僕...お漏らしなんてしてませんよ( ;∀;)
...となりかねません。
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2.透湿性とは…
生地内側から水蒸気が通り抜ける性質を言います。
透湿性能が高い生地を使用しているテントや
ツェルトでは、しっかりと室内の水蒸気を
生地外側に逃がしてくれている為、
生地内側で逃げ場を失った水蒸気が溜まり、
結露(水滴)となることを防ぎます。
テントやツェルトの生地内側に結露(水滴)が
発生した経験はございませんか?
それは使用時の天候や湿度にもよりますが、
生地の透湿性能以上に発汗していることになります。
一般的に安静時(大人)の場合、
1時間あたり「50g」の汗をかきます。
軽い運動で「500g」、激しい運動で「1,000g」と
思っている以上に人間は汗をかいているようです。
透湿性には性能を表す数値というものがあります。
例えば「8,000g/㎡/24h」という数値。
1㎡(縦1m×横1m)あたり、
24時間で8,000gの蒸気(水分)を
透過することができるという表示です。
1時間あたりで「約333g」の透過ですので、
1㎡の生地を使用したウェアを着て軽い運動をすると
透過しきれずに内側が蒸れてしまうことになります。
激しい運動の場合は、ビショビショですね( ゚Д゚)
もちろん季節や個人差によって発汗量は異なりますが、
私のように常時ワキ汗が滴っているような人は、
ハイスペックの透湿性が必要ですね(・.・;)
3.撥水と防水の違い
・撥水とは...
生地の表側に施される水を弾く加工です。
撥水のイメージ↓↓
撥水加工とは、生地表面に薬剤を塗布した加工で
ハスの葉の表面と同様に水滴がコロコロと弾いて
転がります。
撥水加工は表面の加工ですので、
摩擦(毛羽立ち)や経年劣化により、
効果は徐々に低下します。
それを補うために「防水(撥水)スプレー」を
塗布して効果を維持します。
例えば、高価な「ゴアテックス」のレインウェアでも、
長年着用すると摩擦による毛羽立ちや
撥水効果の低下により、生地表面で水を弾かず、
生地表面が全体的に水を吸ってしまいます。
この症状も「防水(撥水)スプレー」で補えます。
「撥水加工」だけが施された製品
・テント冬用外張り(スノーフライ)
・一部メーカーのツェルト
通気性を優先し、またそれが必要な製品に使われます。
「テント冬用外張り(スノーフライ)」
「通気性」の無いフライシートを0℃以下の状態で
使用すると、テント内の水蒸気がフライシートの
外側に排出されず、フライシート内側で水蒸気が
結露し氷結します。
「通気性」のある冬用外張りを使用すると、
テント内の水蒸気は外張り全体から排出される為、
内側の結露が発生しにくくなります。
「一部メーカーのツェルト」
土砂降りなどでは、内部に浸水しますが、
防水コーティングが施された製品よりも
「通気」を伴う為、「結露」しにくい特徴があります。
・防水とは...
生地の裏面に施される水を内部に
浸透させないための加工です。
生地裏面の防水加工イメージ↓↓
防水加工とは、生地裏面にウレタン樹脂などで
コーティングや防水フィルムをラミネートする方法の
2通りあります。
ウレタン樹脂のコーティングによる加工は、
「東レ エントラント」などの防水加工があります。
同様の加工は、他の生地メーカーからも
販売されておりますが、呼称が異なるだけで
加工方法は同じです。
防水フィルムのラミネートされた代表的なものは、
「ゴアテックス」です。
防水加工は、使用の頻度や紫外線量によっても
異なりますが、概ね5年程度で「加水分解」
による劣化が始まり、コーティングの剥離などの
症状が発生します。
撥水加工のような劣化は、すぐには発生しませんが、
劣化を補填することは出来ません。
防水加工には、単純に「防水」のみの加工と
「透湿防水」の2通りありますが、
いずれにも表面で水を弾く為の「撥水加工」は、
施されております。
ライタープロフィール
林 郁範 (はやし ふみのり)
株式会社 オクトス 代表取締役
北海道に生まれ、高校から山岳部に入部し、
大学でも山岳部に在籍。
登山用品販売会社でザックやテントなどの製造に携わり、
1999年にオクトスを創業。
自分がほしいものを作っているだけ。
同じようにほしいと思ってくれる人がいるはず。
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