ご無沙汰しております。富山店です。
2019年も気が付けば3月に突入し、厳冬期(大まかに言えば12月から2月の、一番厳しい気象条件のシーズン)も終わってしまいました。個人的には例年3月というと、「今年も死なずに厳冬期を終えられた」という安堵感・疲労感と、「もっと山に入りたかった」という矛盾した一抹の寂しさと、「これから岩登りのシーズンだ!」という高揚感とが同時に押し寄せてくる、非常に複雑な心境になるシーズンです。
今年の厳冬期も本当に色々ありましたが、その締めくくりとして、厳冬期の剱岳・小窓尾根に入った時の様子をご紹介いたします。
※12月1日から5月15日の間に剱岳周辺の特定のエリアで登山を行う場合、20日以上前に登山届を提出し受理されなければなりません。これを怠ったり、虚偽の申請を行った場合、条例により罰せられます。詳細は富山県登山届出条例第4条第1項を各自でご確認ください。
夏は自動車で馬場島まで入れますが、積雪期は伊折集落までしか除雪が入っていないため、ここから歩きだしになります。とは言っても馬場島までは雪の積もった舗装道路を歩くだけで退屈・時間がかかるだけなので、楽に進むためスキーを準備しておきました。おかげで比較的楽をして馬場島に到着。
ここでスキーをデポし、白萩川沿いを歩いて標高1100m付近の、通称「雷岩」と呼ばれる巨岩の近くから小窓尾根に乗りあげます。
天気予報は入山日から5日間ほど快晴を告げていましたが、そこは日本で最も気象条件の厳しい剱岳。何が起こるか分からないということで、停滞も考慮に入れて計画書通りに13日分の食料と燃料(500のガスカートリッジ6個)を各自で分担して背負っていました。そのため容量105Lのザックはパンパンに膨らみ、私のザック総重量は30kgを越えていました。
その状態で白萩川の渡渉を数回繰り返し、さらに小窓尾根に上がるための急登ラッセルを、そしてそのあとに現れる数々の登攀をこなさねばなりません。
ご覧の通り、初日から相当グロッキーでした。(笑)
しかし経験上、最初の2日をある程度こなせば食料も減って荷物は軽くなるし、重さにも慣れるものです。今回もそうなるだろう、と自分に言い聞かせて無心になってラッセルを続けます…
長くなるので、写真で概要をご紹介いたします。本当に危険なパートでは写真を撮る余裕などないので、お気楽なパートの写真のみですが…
2/23から3日かけて、北方稜線と小窓尾根との合流地点である2650m周辺まで到達しました。
この時学んだのは、30kgを背負って行う雪壁や草付、岩場のクライミングは猛烈に怖いということでしょうか(当たり前?)
そして2/26、ついに今回の登山のハイライトに突入します……
さあ、ついに到着してしまいました
もともと「行けない谷」が訛って命名されたという「池ノ谷」。
その最上部に位置するのが、 写真左下のコルから中央右上に伸びる谷状の通路、悪名高き「池ノ谷ガリー」です。
標高差はおおよそ250m程度で、ここを通過しなければ剱岳山頂には到達できません。
入山数日前から新雪は積もっておらず、気温が高かったので表面は固く締まっていて、この時期にしては登りやすいコンディションでした。しかしながら、一度雪崩が発生したり滑落すれば、写真の下にある池ノ谷まで一直線。遺体は遅くとも春までは上がらないでしょう。
実際に雪崩による死亡事故も発生しているため、比較的安全なコンディションとはいえ緊張しました。
互いにロープを結びあい、このガリーをスピード重視(とは言ってもザックがまだ25kg以上あるので大して早くありませんが…)で無事突破。
残る北方稜線も、クライミングと懸垂下降を交えて慎重に進めば、ついに剱岳山頂へ…
あとは早月尾根を下るだけ、ですが…
この時点で時刻が16時を回っていたので、結果的に山頂直下の雪(氷?)を掘ってテントを張ることに。
最終日となる2/27は複雑な早月尾根の下降をこなし、2/27のうちに何とか無事下山することができました。
2月なので一応厳冬期ではありますが、終始快晴だったので、本来の厳しい剱岳を登ったのか?と言われると正直微妙な感じではあります。
しかしそれでも、馬場島に戻った時の「生きて帰ってこれた、自分はいま生きている」という充実感は強烈で、今シーズンで一番ハードな登山だったのは間違いありません。
…とは言っても、こんな危ない事ばかりやっているといつか本当に死んでしまうので、今シーズンはもう少し気楽なアイスクライミングやスキー、ゆるーい登山もやりたいところです。
(問題は、もう僕の周りに誰一人「ゆる~い」ノリの登山をやってくれる人がいないことですが)
頑張るのも面白いですが、頑張りすぎると死ぬ…!そう思った登山でした。
富山店 武田
ここで、オススメ商品のご紹介です!
中綿には超撥水加工を施したUDD(ウルトラドライダウン)を使用、表生地にオーロラテックス(多孔質ポリウレタン防水コーティング素材)を使用しております。そのためシュラフカバーいらずで、濡れに非常に強いシュラフとなっております。今回は4泊5日でしたが、その間も濡れによる保温力の低下を一切感じずに熟睡することができました。
ダウン量450gのモデル(快適使用温度-5℃)もありますので、これからの残雪期にいかがでしょうか。
450はネットショップでは在庫切れですが、各店舗に僅かながら在庫がございます。お問合せください!
600は店舗分も含めて在庫切れですが、追加生産中ですので暫くお待ちください!
・Therm-A-Reat NeoAir XTherm
もはや説明不要の最強冬山用マットレスです。軽さと保温力のバランスが素晴らしく、もう他のマットレスを買おうと思えません。上記のアネモス600と組み合わせたところ、個人差はあるでしょうが2月の剱岳山頂でも十分眠れました!
ただし個人的には、このモデルのショートサイズ(90~120cmくらい)が復活してくれないかなぁ、と願っております。