こんにちは!
数ある登山やバックカントリー向けのウェア、店頭で商品を見比べてみても、あるいはメーカーのウェブサイトを覗いてみても、さまざまな記号や数字が並んでいるばかりで結局どれが自分の使い方に合っているのかイマイチ結論を出せない……そんな経験はありませんか?
オクトスでは、今シーズンより富山と金沢の2店舗においてカナダのハイエンドブランド Arc’teryx のプロダクトを取り扱っておりますが、実はこの Arc’teryx 製品、それぞれのネーミングを見るだけで或る程度の用途や特徴を把握することができるのです。今回は、そのネーミング規則を簡略化して分かりやすく分類し、主要な製品の特徴を解説していきます。“わかりやすさ” を重視した解説となりますので、個々の用語や説明はブランド公式の記述と少し異なる場合もありますが、ご了承ください。
まずは、大まかな分類構造について見ていきます。
Arc’teryx 製品は、大きく3段の階層によって分類されています。これを仮に上から “カテゴリ”、“クラス”、“タイプ” と命名しておきましょう。
一番上の階層である “カテゴリ” は、大まかなアクティビティを区分するものです。その商品が属するカテゴリの名前は、各商品を手に取ったとき真っ先に目に入る製品タグの一番上、Arc’teryx ロゴのすぐ下に大きく書かれています。Arc’teryx 製品を手に取ることがあればチェックしてみてください。カテゴリは以下の6種類に区分されています。
- ASCENT
アルパインクライミングを念頭においたラインナップです。ヘルメットの着用を前提とした大きなフード、アイスアックスを振り上げてもストレスのない長めの袖、ハーネスを着用した上でのダイナミックな動きのために前は短め、後ろは長めに設定された裾、そして軽さと耐久性の両立が特徴です。
- WHITELINE
バックカントリーやリゾートにおけるスキー/スノーボードのためのカテゴリです。雪の侵入を防止する長めの裾やパウダースカート、スタイルを重視したリラックスフィット、保温性を重視したライニングやインサレーション、そしてエッジや雪面との摩擦に耐える耐久性の高いファブリックが特徴です。
- ENDORPHIN
トレイルランニングに特化したプロダクトです。何より軽さを重視したシンプルでスリムなデザイン、ハイアウトプットな運動を続けるために耐候性や保温性よりも透湿性を重視した素材の採用が特徴です。
- TRAVERSE
一般的なトレイルをたどるトレッキングやバックパッキングにおいて快適に使用できるようデザインされています。フードは小さめに設計されており、フィットは細め、着丈は長めです。ターゲットとするアクティビティこそベーシックではありますが、他のカテゴリと同様に Arc’teryx の最新技術が投入されており完成度と快適性は折り紙つきです。
- ESSENTIALS
特定の用途に拘らず、様々な用途に使用できる Arc’teryx の基本的なプロダクトラインナップです。レイヤリングしやすい短めの着丈と、ヘルメットの着用も可能なサイズのフードが設定されています。また各種ベースレイヤーやダウンジャケット等もこのカテゴリに含まれます。
- 24
アウトドアウェアの要素を取り入れたデイリーユースのためのプロダクトです。Arc’teryx ロゴまでもが控え目にデザインされ、アーバンシーンにマッチします。各種 Tシャツやシャツ類もこのカテゴリに属します。
次は “クラス” について見ていきます。Arc’teryx 製品は、多くの場合 “Alpha SV” などといったように “クラス名” – “タイプ名” という形式で命名されています。ここでの “クラス” はカテゴリ内における製品の用途をより詳細に区別するものであり、“タイプ” は同じクラス名をもつ製品それぞれの特性を示すものです。
例えば、ASCENT カテゴリ内でクラス名 “Alpha” と命名されているプロダクトは、原則としてアルパインクライミングシーンを想定してデザインされた GORE-TEX ファブリクスの防水シェルジャケット/パンツであり、また “Proton” の名前を有するジャケットはミッドレイヤーとしての使用を前提とした高透湿の化繊インサレーションです。
ここで、現在オクトスで取扱いのある主要な製品クラス名をカテゴリ毎にリストアップしてみます。
この他にも、現時点ではそのクラス内に1つしかプロダクトを持たないものや (例えば Sigma FL Pants など)、プロダクトそのものが固有の名前を持つもの (例えば Squamish Hoody など) もありますが、こういった主要なクラス名をおおよそ頭に入れておくことで、その製品がどういった用途で使うことを想定されてデザインされているのかをつかむことができます。
さて、最後に “タイプ” です。これは同じクラス名をもつ製品群の中で、それぞれ個別のプロダクトが有する特徴を表す識別記号のようなもので、アルファベット2文字で表されます。タイプ名は、カテゴリとクラスでそれぞれの用途に適した製品群を選んだ後に、最終的に山行のスタイルや好みに応じてプロタクトを選ぶ目安になります。それぞれのタイプ名が表す特性は、以下の表を参照してください。
ここまでのネーミング規則が理解できれば、既にArc’teryx プロダクトのおおよそのラインナップは全体像を把握できているはずです。
ではここで、仮に冬の谷川岳へ向かうと想定し、プロダクトのネーミングからレイヤリング例を考えてみましょう。
谷川岳は標高帯もそこまで高くなく、その気温は厳冬期の雪山としてはマイルドです。その分、圧倒的な降雪量がありますので、ひどいラッセルになるかもしれません。ベースレイヤーは保温性よりも汗の処理を優先して Phase AR をチョイスします。ミッドレイヤーは、これまた気温がそこまで低くないので高透湿かつ軽量な Proton LT フーディで良いかもしれません。そして延々と雪にまみれ続けなければならない上越の山では、防水性のシェルは必須です。晴れた日に入門ルートでもある天神尾根を往復する程度であれば Beta LT ジャケットでも良いかもしれませんが、悪天時に腰より深いラッセルで大きな動きを続けるような事態になれば Alpha AR ジャケットの長めのドロップテールが腰まわりへの雪の侵入を防いでくれるかもしれません。万が一、5m先すらも見通せないような地吹雪に見舞われても、ヘルメットの着用に対応した大きめのフードは顔まわりの快適さを保ちます。最後に、休憩時のために収納性と保温性にすぐれたダウンジャケット Cerium SV フーディをザックに放り込めば完璧です。
以上のように、Arc’teryx プロダクトラインは非常に明確で分かりやすいネーミング規則のもとに命名されており、一人ひとりが用途とスタイルに応じて最適な製品を選ぶことができるようになっています。ハイクオリティな製品だからこそ自分に合ったものを選びたい、そんな気持ちから迷いに迷って脳ミソがパニックを起こしてしまっている方は、今一度、上記の表を参照して自分が求めている1着を探し出してみてください。